小売業とオンライン

いつもありがとうございます、nulo(ニューロ)株式会社のハギ(Hagi)です。

先日「百貨店空白県」がとうとう出来てしまうことがニュースで取り上げられていました。日本で一番最初の「百貨店空白県」となるのは徳島県。
1990年代には10兆円弱(9.7兆円/年)あった百貨店全体の売上総額は、直近の2018年で6兆円弱(5.9兆円/年)にまで落ち込み、今後更に下降傾向に拍車がかかっていく方向のようです。

昭和の時代は「食料品など日用品はスーパー、高級品など週末のお買い物は百貨店」というのが定番でしたが、①2000年以降ネット販売の台頭と②郊外型ショッピングモールの普及により、百貨店の役目も大きく変容を求められてきています。

特に①のネット販売に関しては、
 (1)リアル(オフライン)店舗やショールームで商品を体験して~
 (2)オンラインで商品を買う~
という棲み分けが今後出てきそうな流れが消費者の購買パターンの大きなトレンドです。

近年注目されている、アメリカのスタートアップ企業“b8ta”という会社をご存知でしょうか?
シリコンバレーで生まれた、実店舗を“体験”に特化した形で、製造するメーカー企業と消費者を結ぶ目的で、大都市の路面やメイシーズ(アメリカの百貨店のリーダー的存在)に店舗を展開しています。
この”b8ta”は提携メーカーとそれぞれ契約し、各リアル店舗でIoT製品を中心とした品揃えをし、実店舗内で展示しています。その中で、店舗で販売することを目的としているのではなく、店舗に来店した顧客が、対象となる商品に対して、どういった行動を行っていったのか、契約するメーカーがGoogle Analyticsのように専用のシステムを介して検証できる仕組みを提供しています。ですので、店舗に来店した顧客がその後オンラインで販売しても、契約するメーカー側がマージンを払ったりすることはありません。来店客の行動履歴に関しては、「店頭の説明書きをどの程度読んだのか?」「商品紹介用の映像を見てくれたのか?」など、対象顧客の反応を細かく分析できるようになっています。

“b8ta”はグーグルとも提携しており、最近では玩具小売大手のトイザらスと提携して「未来の体験型玩具売場」の試験店舗を展開したり、動画ショッピングサイトの”Discover”とライブコマース機能を活用した販売支援をすることを発表したりしています。


*サンタモニカにある“b8ta”の店舗(”b8ta”のHPより転載)


このような流れはまだ日本では産まれてきていませんが、”Amazon Go”のようにオンライン事業を生業としているプレイヤーも、小売りやリアル店舗に新しい仕掛けを試行錯誤している昨今、都市部だけでなく、地方でもオンラインとオフライン(リアル)の境界線が明確で無くなってくるのかもしれません。

100年以上も前から広告業界で提唱されてきた「AIDMA(アイドマ)」という消費者の購買プロセスを分解して検証するモデルも、近年はそのモデルやプロセス自体が変容しています。商品自体を知る(A=Attention)のはオンラインで、
欲しいと思う(D=Desire)は実際にお店で商品を触って、商品詳細を調べて頭の中に記憶として残る(M=Memory)のはオンライン~という風に、ネットとリアルの世界を行き来する消費者が増えていると思われます。
特に、最終的に顧客が購買行動を起こす最後の”A(Action)”については、徐々にオンラインに吸い込まれていく可能性が大きいのでは、と思います。



“クリックアンドモルタル”や“オムニチャネル”という言葉が業界でもよく使われ一時期流行言葉のようになりましたが、今後はその世界が当たり前となり、オンラインからオフライン(リアル)への顧客の導線、あるいは、オフライン(リアル)からオンラインへという流れが、商品特性やサービス特性に従い、より複雑に絡みあうようになると思われます。

マーケティング活動で投下する広告の効果測定も、オンライン単体でなく、オフラインと連動した形で検証する必要が出てくるでしょうし、顧客のショッピング体験も、顧客がオンラインとオフラインの両方のチャネルを行き来することを前提に設計していくことが今後は求められてきます。

日本の小売市場全体に占めるネット販売の総消費額の比率(EC化率)は6.22%(下図/2018年時点)ですが、アメリカは10%、中国は20%と、日本より一歩先に進んでおり、日本の市場においても、今後、今の2倍~3倍はネット販売すなわちオンラインを通じた購買が進んでいくと思われます。


*経済産業省「電子商取引に関する市場調査」より抜粋


百貨店の話に戻り・・・日本の都道府県で「百貨店が一店舗のみ」となったのは熊本県や鹿児島県の比較的規模の大きい場所も含め、全部で15県になったそうです。

百貨店業界もこのまま衰退の道を進んでいくわけではなく、新しいチャレンジをしながら、ネット事業との融合やオフライン(リアル)でしか出来ない経験や体験を活かしながら、その販売チャネルとしての“強み”を再認識~強化して、市場の中での新しい存在感を生み出していくとは思いますが、その流れの中で、オンライン(ネット事業)との親和性をますます追及していくものと思われます。

今後EC化率が更に進んだ時代を想定して、皆様の会社においても、それぞれの販売チャネルを見直してみて、顧客が商品を認知してから購買に繋がる経路を分析し直し、「オフラインで商品を触って、オンラインで買う」など次の時代に適合する新しい購買パターンの視点で再構築してみてはいかがでしょうか?

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